2004年8月29日コミティア購入物件


2004年11月17日読了分

【同人誌】「スーパーレディレナちゃん 第2部予告編」 木持隆司 <木持アート出版>

 いや〜本当に素晴らしい。いちいちデッサンの狂った作画、妙なパース、目の焦点が合ってないキャラの表情、珍妙なポーズ、どう見てもセンス古すぎでアメリカンテイストなレナちゃんのグラマラスバディ、ほとんど全部が微妙に曲がってて長方形になってないコマやモノローグの枠線、微妙に傾いてるセリフの写植などなど、あらゆるところがヘンすぎて頭がクラクラする。ストーリーのほうも脈絡があるんだかないんだか。じいさんと青年のレナちゃんが散歩しているだけみたいなお話の中で、突如飛び出す童謡もインパクト絶大。しかも本人は奇をてらっているわけではなく、誠心誠意、大真面目で描いているっぽいところがまたすばらしい。どうやったらこんなものが出来上がってくるんだろうなんかもう感動モノの一作です。

【同人誌】「火色」 おがわさとし <おがわさとし雑貨店>

【同人誌】「水窓」 おがわさとし <おがわさとし雑貨店>

【同人誌】「水の下の千の夢」 おがわさとし <おがわさとし雑貨店>

 「水窓」「火色」はアワーズライトに掲載された短編を収録した本で、「水窓」が2001年6月号、「火色」は2001年9月号。「水の下の千の夢」は、ビッグコミックスピリッツ21に掲載された邦題作のほか、「融合」「鏡の中の…」「鯨神」「前夜」と5本の作品を収録した短編集。この人のきっちりした描線と、ここぞというときの大ゴマなど、印象的な画面作りはやはり素晴らしい。ストーリーもしっかり構成されててとてもいい。

 この3冊の掲載作品の中でとくに好きなのは、まず「水の下の千の夢」。「恐怖の大王」の落下によって南極の氷が溶け、すっかり水没してしまった東京の街で、案内人の男たちがとある女性の友人が残した写真に写っていたビルを探す……という内容。水没した東京を記憶を頼りに探っていくという仕掛けが面白いし、ラストも暖かみがあってジーンとくるものがあった。「鯨神」も好き。空飛ぶ巨大な鯨の上に住む代わりに、鯨にたかるダニなどの虫を退治したりして共生している人々を描いたファンタジー。着想がユニークだし、鯨の身体を舞台にしたビジュアルも面白い。「水窓」は河童のようなお皿が頭の上にできてしまった少女と、その主治医の青年の触れ合いが微笑ましいハートウォーミングな物語。少女が可憐で良いです。

【同人誌】「ice box」 山本マサユキ <山本内燃機>

 雪が大量に降るスキー場へワンシーズン住み込みのバイトに来た青年が、そこで不思議な少女・ユキナと出会うも、彼女、そしてそのスキー場には部外者には知られてはならない秘密があって……というストーリー。ユキナの履かない表情が印象的。ボリューム感があってきっちりまとまった短編作品。60ページ超と同人誌にしてはページも多め。

【同人誌】「それは刹那の風」 アニュウリズム <シカクイハコ>

 なかなかいいお話。重く暗い雲に覆われた世界で生きる少女が、友達の作った雲を吸い取る機会のおかげで、念願だった空を見ることに……というファンタジーなお話。むくむくした感じの独自の絵柄はユーモラスかつ不思議な雰囲気があって魅力的。味があっていいし、お話のほうもだんだん長くなり、読みごたえも出て来ている。

【同人誌】「PY.18330421」 加瀬世市 <テレピン>

 とある青年がある日出会った自分のクローンとともに逃避行を続けていくというお話。描線のしっかりした絵柄はカッコイイし、お話もちょっと謎めいてて緊迫感あり。なかなか読ませてくれる。絵もうまいし、背景とかまでもうちょっと作り込んだら、商業誌でも遜色ないなーとか思う。

【同人誌】「Short Hope Lights No.004」 ぴこぴこリョウ・北村 <ぴこぴこ。>

 いつもながら安らかな気持ちになれる良い絵です。線はシンプルだけど暖かみがあって、うまい。漫画としては短いけど満足感はあります。

【同人誌】「とかげの生活3 SIDE-B HELL-SEE」 さくらのりたか <DARUMAYA FACTORY>

 今回はたいへんシリアスな鬱展開に振ってきた。ドロドロした愛憎劇をやっているけれども、しっかり読ませる。絵的にはラフなところはあるんだけど、けして見にくいわけではないし、コマ割も整理されてて読みやすい。やっぱり読ませる作品を描く才能は豊かだと思います。これからもどんどん描いてってほしい。

【同人誌】「WIRELESS 4」 <WIRELESS>

 本来はライブイベント「WIRELESS」向けの本で、そのイベントには行ったことがないので雰囲気は分からんのですが。けっこういろんな人のいろんな作品が掲載。収録されている作品の中では、西田章ニ「米ニスト」がいいなと思った。いきなりパンクバンドをやりだすとかいい出した高校生男子が、友達と知り合いの女の子を巻き込んでいちおうバンドを結成。彼らの日常を描いていくって感じの漫画。まあ別に劇的なことにはならんけど、ほのかに生暖かい感じが気持ちいい。小田扉はタイトル不詳の漫画を4ページ。飄々とした味があって、オチのギャグも利いてて面白い。あと、みず「宇宙の住み方」はファンタジーな絵柄が魅力的。

【同人誌】「鉱山少女」 よみねむこ <よみねこ>

 鉱脈を探し当てる能力を持った少女とそのボーイフレンドのつながりを描いたほのぼのしたお話。垢抜けないけど暖かみのある絵柄が好感度高し。

【同人誌】「こもり雪 つらら雪」 三五千波 <シュトルムウントドランク書店出版部>

【同人誌】「姫女学生貴婦人」 三五千波 <シュトルムウントドランク書店出版部>

 どちらの本も独自の美の世界を突き進んでいる感じ。それぞれは短いけれども、濃密で、断固とした姿勢を感じさせます。

【同人誌】「みるく☆きゃらめるのよろめき」 <みるく☆きゃらめる>

 石川ひでゆき「スケッチ・ショウ」は、学校で少年少女がヌードモデルをやっているうちにエッチな流れに……というお話。だんだん線がなめらかできれいになっているような。何気にけっこうエロいです。また今回の吉本たいまつによる研究レポートは「性の越境と多様性を求めて」。なかなか大きなテーマなのでまだ研究としては端緒という感じであろうかと思うけれども、なかなか考えさせられる要素、材料がつまってて興味深い内容。


2004年11月16日読了分

【同人誌】「けだもののように III-11〜12合本 完結編最終回」 渋蔵 <ぐんたまカンパニー>

 10年続き、第一部は太田出版から商業単行本化[Amzn]もされた大河同人連載シリーズがついに完結(単行本の感想は2002年7月13日の日記を参照のこと)。

 とある田舎の学校にやってきた美しく奔放な転校生・ヨリ子と、純朴な少年・一太の触れ合い、そして性的なことに無頓着な彼女が周囲の少年らの男たちと次々と関係を結んでいく学園編から物語は始まり、ヨリ子やその保護者であったおっさんの放浪を描いた東京編へと続く。そして一太とヨリ子が再会する完結編まで非常に読みごたえのある物語を構築。しっかりと力強く、暖かさと艶めかしさにあふれた印象的な描線、堂々としたストーリー運びなど、強くひきつけられるもののある作品だった。放浪に放浪を重ねたヨリ子が、物語の最後に浮かべた表情を見たら、これまでのさまざまな出来事が脳裏に甦ってきてジーンとした。商業誌でもなかなか見られないクオリティを持った作品であり、機会があったらぜひ一度手にとっていただきたい。コミケ、コミティアで「ぐんたまカンパニー」に行くか、タコシェで通販されている模様。渋蔵(比古地朔弥)のホームページはhttp://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/5094/。覗いてみたところ、FEEL YOUNGの12月売り2005年1月号から新連載「ライジングガール」が始まる予定とのこと。

【同人誌】「Brought to the Gift of Death!」 タテワキコウ <平行事情>

 巨大な子供がおっことしたくまのぬいぐるみのせいで、星が一つ滅亡してしまうという内容。ラフな作画と、ブラックなファンタジーを飄々と繰り出す呼吸は気持ちいい。状況がもう少し直感的に分かりやすいともっと良かったかな。

【同人誌】「siren vol.9 happy end」 保科慎太郎/ニシムラカズコ

 保科慎太郎「新しいはなし」、ニシムラカズコ「スター」ともに卒業にまつわるお話になってる。どちらも甘さと苦さ、切なさが同居しつつ、前に向かっていくお話になっていてなかなか爽やかな青春風味。どちらも自分ならではの作風を持っててしっかり読ませます。「新しいはなし」のほうは、冷めた空気の流れるカップルの朝食シーンを描いた導入部で、テレビのニュースの音声を書いたフキダシが目立っちゃって一瞬話がつかみにくかったのがちと惜しいかなと思った。でも基本的に両作とも好みな絵柄だし、楽しんで読めた。

【同人誌】「すこやかなまんが 7」 <スタジオ四国>

【同人誌】「オールおで子」 <スタジオ四国>

 うわー、久しぶりだなあ。以前は「すこやかな大西」というサークル名で活躍していた大西あやの、久々のコミティア新刊。グロテスクな感じの描線ながら、全体的な印象としてはユーモラスでキュートな作画が特徴で、なかなかにヘンで面白い作品を描く人。「すこやかなまんが」シリーズは、2000年5月のコミティアで買って以来、実に4年ぶり。こういう妙な雰囲気を持ったユニークな人は好きです。今後もどんどん活躍してっていただきたい。

【同人誌】「Loincloth Planet」 弘岳粟高 <あわたけ>

 「ふんどし惑星」シリーズとのこと。野外で少女が全裸もしくはそれに近い格好でうろうろするというシチュエーションながら、なんか妙にほのぼの。でもときどきやけにエロチックだったり。なんでもありな安心感と、意外と思いきったエロっちいこともやる、そのマッチングが面白い。この人の描く女の子は、「そこいらにいる近所の気のいい娘さん」って感じがするところが個人的にはツボにきます。

【同人誌】「つゆくさ14」 <つゆくさ>

 独特のぽつねんとした絵で、とつとつと、でも滞るところなくつぶやき続けるって感じの不思議な触感のある三島芳治の作風がいつもながらいい。今回の本に収録された「まほう中学」も、その学校にいる間だけ生徒がまほうを使えるようになる不思議な中学校の話を淡々と記録。騒がない、でも不思議なことは不思議なこととしてありのままに描いていくスタンスが妙に心地よい。

【同人誌】「おはなしよっつ」 川流れ河童 <空飛ぶ河童>

 「明日ガンバりなよ。」「世話焼けちゃうね」「縁側と猫とわたし」「空き缶」の4本を収録した再録本。えーとだいたいは読んでるはずかな。細い線できっちりとした絵を描こうとする、生真面目な感じのする作風に惹かれる。そのうちもっと長いのを読んでみたいなあと思わせるものあり。

【同人誌】「ラブ・バズーカ」 らいだゆず <HATAHATA>

 マガジンFRESH 2003年 1/25号に新居さとし名義で掲載された読切「ラブ・バズーカ」に、後日談とかを追加した作品。元気者で押しの強い女の子が、先輩男子に突然告白したところから始まるドタバタラブコメ。明るいギャグと、けっこう甘〜いラブコメ空気はどちらもこの人の持ち味。それがストレートに生きてて楽しい作品。

【同人誌】「天然レッドゾーン」1号 <ひまわりデザイン事務所>

 くにゃくにゃした線のマイペースな明るい作風が持ち味。ゴチャゴチャしてて気楽に読めて勢いがあるのがいいです。とくに何も考えずうわーっと読める。

【同人誌】「くま20XX」 新田五郎 <WAIWAIスタジオ>

 ふぬけ共和国の新田さんのところの本。この人の文字原稿についてはいつもすごく面白くて、さんざん楽しませていただいているのだが、漫画の本をちゃんと読むのは初めて。ときどきホームページのタイトル部に載ってるイラストとかすごく味があっていいなーと思っていたのだが、漫画のほうも良かった。くだらないけどセリフのテンポとかすごくいいし。あと女の子がけっこうカワイイと思う。イマ風の絵じゃないかもしれないけどホッとする味。

【同人誌】「KONNO TURNTABLE」 <JET MEGANE=やぐタンテーブル>

 モー娘。の紺野さんですか、その人に関する本で、新田五郎、JIMMY、オザワアキツグの3名が執筆。正直アニメ以外にテレビは全然見ない人間なので細かい内容については分からんのですが、それでも新田漫画は面白いと思いました。れいな(田中さん?)がサイコロ振ってて「こいつはいい目が出やがったぜ」と、「ガンバの冒険」のイカサマみたいなことをいってるシーンが面白かった。


2004年11月14日読了分

【同人誌】「いちごおおかみ」 藤島ツトム <Comic Cook Books>

 Comic Cook Webで連載された作品を1冊にまとめたもの。森にでかけたおさない兄妹の妹が、いちご畑の主であるおおかみにとらえられ、彼女を助け出すべくそのおにいちゃんがカラスを味方につけてがんばる……という子供が主人公のファンタジー物語。きれいにまとまった素朴な絵本調の絵柄でしっかりした作り。なかなかよくできた作品だと思う。上記Comic Cook Webで1〜3話分のお試し版が読めるんで、絵の感じはそちらを見ていただければと。ただFlash形式なんでじっくり読みたい場合は本のほうがいいかなー。

【同人誌】「Blue Blue Berry」 小杉あや <AI・MIN>

【同人誌】「おたくの彼女」 小杉あや <AI・MIN>

 「Blue Blue Berry」は近況本といった感じの趣。「おたくの彼女」は昔H漫画誌の巻末とかの2色ページに掲載された作品をまとめたもの。なかなかかわいらしいイタズラっぽいオトメな漫画になってて楽しめました。

【同人誌】「全裸立國 イラスト集」 海明寺裕 <空色の猫目石>

 「奴隷立國」と同様の世界観に基づいた街の光景などを描いたイラスト集。「すべての女性が全裸で生活」している国の日常風景を描写していて、一枚絵のイラストながらそれぞれにドラマ性が感じられて興味深い構図となっている。

【同人誌】「ゆめの終わり」 音子or寿

 最近はIKKIとかで「岩岡ヒサエ」名義で活躍中、11月30日には単行本「しろいくも」[Amzn]も発売予定。今回は「ゆめの底」シリーズの最終話。生と死の境目があいまいな、ゆめの中の領域にあるコンビニにつとめる店長さんと女の子のお話。細い線で丸いりんかく、かわいいけれどなんだかもの哀しいようでもある、独自の絵柄でファンタジーなお話を構築。世界が閉じている点がちょっと物足りなく思える点もなきにしもあらずだが、雰囲気は相変わらず良いです。

【同人誌】「追い影っ子」 甲斐マツリ <アイカラッカ>

 気弱な少年とその友達、そこに影の中にまぎれる魔物とそれを追ってきた少女をからめてファンタジーなお話を作っている。キュートでキレイな絵柄と、きっちりまとまった暖かいお話で爽やかに読ませる。魔物と少女がもう少しお話の中で生きてくるといいかなあとは思うけど、品の良い作品に仕上がってて好感度は高め。

【同人誌】「メガネ冴えない日」 ein <空事象>

 メガネがキュートな図書委員、学級委員風の娘さんが、学校をサボって心の赴くまま川を目指す。スッキリした涼しげな絵柄がたいへん気持ち良く、ゆったりしたストーリー運びも楽しい。この人の清潔感があってユーモアもある作風は好きです。

【同人誌】「幻想蹴国志 3」 新谷明弘

 おお、なんかヒキが強くなってきている。蹴球で戦争をする国々の興亡を描いた歴史ロマンを、意外とシリアスに真っ正面から描いている。蹴球がベースなので、なんだかのどかなような間が抜けているような感じもあるのだが、意外と本格的にやってるというミスマッチが独特の雰囲気を作っている。たいへんユニークな作品で面白いです。


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